



オホーツクの人は言う。
「流氷の来る栄養豊かな海で育ったオホーツクの毛がには抜群だ!」
道東の人は言う。
「真冬の厳寒の海で獲れる毛がにはどこにも負けねー!」
噴火湾の人は言う。
「実は噴火湾の毛がにがナンバー1だ!」
どれも根拠があり何一つ間違っていない。
ひとつ違うのは水揚される時期なのである。
オホーツクは4月〜7月、噴火湾は6月〜8月、太平洋は12月〜3月。
身入りの良い状態のものを浜ゆでし急速凍結したものでも充分楽しむことができるが、冷凍しない浜ゆでそのものを味わう旬の毛がには格別だ。
オホーツクと道東での浜ゆでは実施した。
噴火湾ができれば年間旬の毛がにを味わうことが出来る。
先週、噴火湾方面を出張してきた。
何の欲もなく、顔を出さなければ大変な事になる“いぶり中央漁協”の古股さんを訪ねた。
大歓迎を受けながら、
「イシ、人との繋がりは絶対財産になるぞ」
と知り合いを呼ぶ古股さん。
人と出会い、盃を交わし、魚談義に盛り上がる。
当然、毛がにの話題にもなった。噴火湾での浜ゆで毛がにをやりたいという話もした。
一緒に飲んだ加工屋の社長、
「俺のとこ、昔から毛がに炊いてるんだよね。」
この社長とは何の商売もやらずに3年が経つ。
今回で会うのが3回目。
やっと一つの線が繋がった。

僕は魚は“見る、触る、捌く、食べる”が4原則だと思っている。
ぎょれんには北海道の各地に9箇所の支店があり、情報の発信源として大きな力となっている。
近年は若手職員も増え、学ぶことも多い産地支店で大きく成長することであろう。
ただ、苦言を申し上げると、僕の4原則を実行しているかどうかである。
特に“食べる”を実行しているかどうかなのだ。
浜に行って漁協の方でもいい、漁師さんでもいい、
「この魚食べたことないんです。是非食べてみたいんです。」
と言って欲しい。
「馬鹿やろー!」と言う浜の人よりは、必要以上に微笑んで手に持たせてくれる人がほとんどだから。
その分、使命感を覚えるんだから。
ところで、先日苫小牧に行ってきた。
マツカワが水揚されており、数年前から行ってきている放流事業によって資源が徐々に増えてきているそうだ。
漁協の吉田次長に天然マツカワと放流マツカワの外見上の見分け方について聞いてみた。
僕の想像とは違う回答に、
「やはり浜には何かがある」と感じた僕なのである。
さて皆さんは下記の画像のどちらが天然かがわかりますか?


正解は下段が天然のマツカワです。
違いはヒレの部分の黒い模様。
放流のマツカワは所々模様が短くなっていますが、天然のマツカワはきれいな線になっているのがわかります。
放流のマツカワでも成長するに従い天然のようになるとのことです。
味についての違いは僕の舌では判別つきませんでした。
僕の母校である北海学園大学剣道部に、ロシア人留学生ヒミーロフ君がやってきた。
ロシアで剣道を習っていて、僕の見る限り二段位の実力だろうか。
とにかく毎日稽古にやってくる。
驚くのは日本人とは違う体の構造。
特に足首の柔らかさが日本人とかけ離れていて、剣道のいわゆる摺り足がバレー(球技ではない)をやっているような運び方をする。
体力もあり、負けん気も強い。
大学流の稽古方法に戸惑っているようで、聞きたいこと、教えて欲しいことが多くありそうだが、言葉の壁にぶち当たっているようだ。
おそらく、日本の文化にも親しむ機会も少ないであろう。
僕はそんなヒミーロフ君の寂しげな表情が気がかりでならない。
7月中旬には帰国するヒミーロフ君。
今週末、彼を自宅に呼んで、北海道の魚をたっぷり食べてもらい、温泉に入ってもらい、地図を見ながら200海里問題を語り、剣道少年団の子供達と剣を交え、ヒミーロフ君の青春時代の1ページが出来上がればいい。
こんな些細なことで、小さな平和の架け橋ができるのであればボヤっとしているわけにはいかない。
関西空港にぎょれんの上司を迎えに行った時のことだった。
無事合流し大阪へ向かい始めた時、車内のレーダーが猛烈に「ピピピピピピピピ」と鳴り出した。
前日もスーパーの自動ドアに反応し、やかましいと思っていたレーダーだ。
当時、本所の浅野次長が、
「イシ、イシ、鳴ってるぞ、鳴ってるぞ、大丈夫か、大丈夫か」との心配をよそに
「このレーダー当てにならないんですよ。昨日もびっしり鳴ってるんですよ。」と答えた瞬間、
「ピピピピピピー!」
レーダーではなく、制服を着た警官の笛の音だった。
真っ直ぐの気持ちの良い直線。
なぜか一部だけ40k制限。
これは、警察の成績稼ぎの何物でもないと腹が立つ。
車内は「やっぱりか、やっぱりか。」と大爆笑。
苛立ちは警察にぶつけるしかないと思い、車を降りる。
屋外に2箇所ある調書机。
両方とも婦警が座っている。
僕は左側に案内された。
苛立ちはすべて消えてしまった。
目の前にはかつて婦警を演じた浅野ゆうこ風のとびっきりの美女。
調書の時間が短く感じられた。
車に戻る時、右側で調書を取られている男性はグタを巻いている。
婦警はどことなしか吉本芸人風である。
僕は単に関空警察のクレーム防止となる人材登用にまんまとやられたのである。
車に戻った時、大笑いした僕に申し訳なかったのか、上司3名は一人3000円のカンパをしてくれた。
「イシ、大した落ち込んでないな」
と聞かれ、阪神高速を飛ばしながらその理由をにやけながら説明した。
僕は水産業に携わっているため、ある程度の魚の知識があるが、業界の常識が一般の方の常識にはならないものだ。
宣伝のため、カレイのマツカワをラジオ番組に持っていった時のこと。
「石坂さん、マツカワはカレイの仲間ですか?ヒラメの仲間ですか?」と聞いてくる女性スタッフ。
「ヒラメもマツカワも同じカレイの仲間ですよ。」と答える。
続けて女性スタッフ
「マツカワがカレイの仲間と言うことはヒラメとは違うと言うことですよね。」
もう何が何だかわからなくなる。
「カレイの種類と言うのは、約40種類あって、真ガレイ、クロガレイ、ヒラメ、砂ガレイ・・・・・・。すべてを総称してカレイと言うんです。全部カレイの仲間ですけど、カレイにも種類があって、呼び方も違うんですよ。」
と丁寧に答えたつもりだったが女性スタッフ、
「そーかー、マツカワとヒラメはカレイと違うんだー」と納得している。
彼女のカレイとは一体何なんだろうか?
上手はまだいた。
マツカワの刺身を姿造りにして持っていったところ、女性アナウンサー、
「このカレイの裏側には身があるんですか?」と聞く。
「カレイには上下にきちんと身がありますよ。」と答えると、
「でも目が上だけに付いていて反対側が見えないと泳ぐ時不便ですよね」
どうも感覚がおかしい。
「カレイはどうやって泳ぐと思いますか?」と聞くと、
両手を合わせて左右にくねくねさせながら
「こうですよねー!」と自信げに答えた。
近頃の子供が、ホッケが開きホッケの状態で泳いでいると思っているのは、真実味を帯びてきた。
(画像はヒラメの姿造りです)

日高方面出張の時のこと。
一通りの仕事も終わり、日高支店の方達と温泉に入った後で酒を楽しむことに。
温泉に入る時、返却ロッカーに入れる100円がなかったために日高支店の鹿又課長にお願いし、一緒に財布を入れてもらった。
風呂上り、僕の上司の鷲さんが
「イヤー、風呂上がって座っていたら、開いたロッカーに財布が忘れられていた。結構、入ってたなー。フロントに預けたけど、今頃気付いて焦ってるだろうな。」
何か気になり鹿又課長に聞いてみた。
「課長、財布ありますよね?」
「あーるよ。」
居酒屋に入る直前にも
「課長、財布ありますよね」
「あーるって!」
なぜかムッとしている。
飲み会の最中にも財布の話題。
「もしかして馬主の財布ですかね?」
の問いに鷲さんは
「イヤー、馬主の持つような財布じゃなかったなあ」
宴も終わり、会費の徴収。
「課長、財布返してください」と言うと、
「なーんでお前の財布持ってるのよ、ないって。」
ここで、整理してみよう。
○課長は、ロッカーに一緒に財布を入れて欲しいと言ったのを、「このロッカーを使わせてください」と勘違いしていた。
○課長は「何で他にもロッカーが空いているのに、俺のロッカーを使わせろと言うんだ」と不思議に思っていた。
○ロッカーに僕が財布を先に入れた後、課長は隣のロッカーを使用した。
○僕は籠に脱衣したため、財布だけが無造作に開きっぱなしのロッカーに置かれていた。
○上司の鷲さんはこれを風呂上りに発見しフロントに届けた。
○「結構入っていた」という鷲さんの言葉に僕の財布ではないと思ってしまった。
○課長は僕の財布を「あーるよ」と言ったので安心してしまった。
○ところが課長は、「何で俺の財布があるかないかを何回も聞くのよ」とムッとしていた。
○居酒屋に入る前に「財布ありますよね?」と聞いた僕に、「あーるって」と自分の財布を見せた課長。僕は何で素直に返してくれないんだと疑問に感じた。
○多少の責任を感じたのか。課長はフロントに電話をかけて、僕の財布の所在を確認した。
僕の財布は不思議と必ず帰ってくる。
でも今回だけは奇跡に近い。
もし、すべてを失ってしまっていたら、責任のやり場に困り果て、のた打ち回っていた事だろう。
昨日、利尻に行ってきた。
利尻空港強風のため、場合によっては引き返すというアナウンス。
無事、飛行機は着陸。
歓声と拍手が沸き起こった。
飛行機を降りて風の強さにびっくり。
よく着陸したものだ。
稚内支店の所くんの出迎えがあり、車で利尻の各浜を訪ねた。
利尻は時の流れが違う。
道路を歩く老人を車がよけて走る。
所々で立ち話をしている老婆。
その後方にそびえる利尻富士。
スローライフを楽しむには最高の環境である。
楽園からビルの8Fへ。
現実へと引き戻された時、なぜか寂しいものである。
仙法志という浜では
「今日出来たばっかりの一夜漬けウニだ。ガッパリ食え。酒飲むか?」
とコップ差し出す所長さん。
一杯だけいただいた。
最後に行った鴛泊。
後は船に乗るだけということで、お茶の代わりに冷えたビール。
島に宿泊しないことに罪悪感を覚える。
「今度はゆっくりしてって」
という言葉を噛みしめながら、ビール片手にフェリーに乗り込み島を後にした。

黒松内町につくし学園という施設がある。
事情のある子が入園している施設である。
小学1年生と2年生の時に友達だった、この施設の子だった「スガ ナオヤ」君。
僕よりは背が高く、走るのが速くて、少したれ目で色黒だった。
両親とは事情により会うことのできなかったナオヤ君。
寂しさは友達で紛らわそうとしていたのだろうか。
毎朝、通学路を遠回りをして僕の住宅近くの道路まで迎えに来てくれる。
「イシくーん。イシくーん。」と呼ぶのが合図。
ナオヤ君はなぜか家の玄関までは来ないのである。
家庭という基本的な単位を見ることの恐怖だったのか、お下がりの首が伸び切ったTシャツが気がかりだったのか、言葉では解決できない年齢だったが、ナオヤ君の気持ちは伝わっていた気がする。
僕が転校になる事が決まってから、パタリと「イシくーん」という声がなくなってしまう。
ナオヤ君は別れの悲しみが膨らむのを避けていたのだろうか、それとも、去るものを追わず、宿命を背負った者として、違う心の拠り所を求め始めたのだろうか。
黒松内町を離れる汽車(当時はまだ汽車が走っていた)のホーム。
お別れの記念品を持ってきてくれる友達の中から少し離れた所に、スガナオヤ君が立っていた。
笑顔だった。
それは、何かを振り切った爽やかな笑顔だった。
言葉はなかったが、
「イシ君、どこに行っても頑張れよ。俺も頑張る。」
と言っているようだった。
物には変える事のできない、お別れの時のスガナオヤ君の笑顔。
「イシくーん!」という声は汽笛とともに余韻を残しながら静かに消えていった。
そろそろ北海道でも真イカが姿を現し始める。
不思議なのは、真イカを代表する旬の産地は函館ということ。
時期はずれるが、真イカは道内各地で水揚げされ、味も大差があるわけではない。。
それではなぜ函館なのか。
答えが見出せない時、助けてくれる後輩がいる。
ぎょれん福岡支店の倉地君だ。
以前にも、マスノスケ(キングサーモン)のスケの意味がわからず彼に聞いてみた。
30分も経たないうちに答えが返ってきた。
「石坂さんスケとは漢字で助と書きます。助の意味は大将だとか一番と言う意味がありますので、マスノスケはマスの中の大将と言うことでしょうね。ちなみにサケは助が変化してスケ、スァケ、サケとなったという説もありますよ。」
彼の探究心は素晴らしい。
根室時代、サケがどれくらいに母なる川に帰ってくるかを知るために、標津サーモン博物館の館長に聞きに行った男なのである。
臆せずとした行動と、学習能力。
かつては鼻にかけた部分(本人は意識していなかったろうが)もあったように思われ、多くの諸先輩の熱き指導も受けていた。
最近、子供にも恵まれ、体も丸いが心も丸くなったように思われる。
ところで真イカ。
なぜ函館なのか?
倉地君に聞いてみた。
素晴らしい回答。
「函館の海岸に見える漁火の風景。そして朝になると"イカー!イカー!”とリヤカーを押す行商の声。これが風物詩であるのと、何よりも、函館市民のイカを待つ心。これがイカの街函館を作り出しているんです。」
僕はこの答えを聞いてから、どこの浜にも人がいる限り、文化がある限り、そこそこの旬があり、決して産地同士で優劣を決めるものではないと思った。
それは人の心が決めるものだから。
愛犬の名前は「ムカ」。前の飼い主がつけた名前だ。
現在16歳、人間の年なら高年齢である。
ハスキー交じりの雑種でオス。
ムカと出会ったのは今から6年前。
前の家主が新築したため犬を飼うことができず引き受けた。
小さい頃、子供にいたずらされたため人間不信に陥っていたムカは反抗的だったが、犬好きの僕がわかったのだろうか?金網越しに首を横にくっつけた。
友情はここから始まる。
金網に入るなり猛突進で僕に飛びついてくる。
即、散歩に連れて行った。
わがままに走るムカをしつけた。
今では鎖がなくても僕の横を歩く。
前から犬が来ても「待て」の合図でお座りをして待っている。
「待て」と言って100m歩いてもついて来ない。
「よし」の合図で一目散に走って来るのである。
僕の自慢の愛犬「ムカ」。
朝5時になると必ず「散歩の時間だ!起きろー!」と言ってくれる。
年中無休だ。
二日酔いで裏切ると、思い切り頭突きをしてくるので、「わかった、わかった、ごめんごめん」と言うと、鼻で「フッ!」と言って散歩道を走り出す。
今では走ると息切れ、耳も遠くなり、目も見えないようだ。
消化の良いフードをあげても下痢が止まらず、骨も弱ってきているようで足を引きずるようになった。
最近、表情が豊かになったような気がする。
どれだけコマーシャルのように話して欲しいことか。
悔いのない人生の最終章を送らせてあげられるのは僕なのである。

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